見えない女性たちの行方
ひきこもる女性たちに共通する原因とは?
――なるほど。そのほかに、女性の視点で気づかれた特別な点はありますか?
「いわゆる「毒親」を抱えていたり、「摂食障害」や「虐待」「リストカット」「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」などと言われたりしてきた問題を背景に抱えている人たちの中にも、「ひきこもり」状態になっている女性たちがいます。
性被害や子どもの頃の虐待など、心の傷から立ち直れないという深刻なケースもあります。
世間的にも、家庭内でも就労するのが当たり前と考えられている男性と比べ、たとえ家にいても、「家事手伝い」という疑似的な肩書きによって、ある意味守られている女性は除外されてきました。
さらに、夫や家族以外の外部との関わりがまったく途絶えている「ひきこもる主婦」や、そもそも回答欄の性別に選択肢のない「セクシュアル・マイノリティ」などの人たちと同じように、社会にとって想定された対象ではなく、存在しないことになっているのです」
――「働いていない」という点で男性は社会から咎められ、女性は免責されている。それゆえに彼女たちは消えてしまっているのですね。
「こうした彼女たちのひきこもる原因となった「見えない声」に耳を傾け、寄り添って思いを受け止めてくれる場、発言できる場は、なかなか存在しないのが現実です。
それは「ひきこもり=男性」という往年の図式から、彼女たちが悩んでいるであろうことを汲み取る姿勢がなかったことが起因しているのかもしれないと思いました。本書では当事者たちの現実を数多く取材しました。ぜひこれまで隠されてきた原因を考えるきっかけになるよう、読んでいただければと思います」
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